株の取引手数料は無料化はなぜ実現できるのか? デイトレの終焉? 日本の株式市場の構造転換とその落とし穴とは?

2019年12月から日本の証券会社の手数料無料化の流れが加速しています。

慈善事業をしているわけではないので、当然ながら手数料以外で利益を得る仕組みを作った上で手数料無料化を打ち出しているわけです。

その点、信用取引では金利収入、投資信託では信託報酬が証券会社に自動的に入って来るのはわかる人にはわかりやすいですね。

信用取引の仕組みがわかっていれば、逆日歩が発生していなければ取引の間中ずっと金利が取られ続けていることは理解しているはずです。

投資信託の目論見書を読めば、販売している証券会社が毎年どれだけの額をピンハネするかがわかります。

ですが、PTS(私設取引システム)で無料になる仕組みって、多分契約条件のどこを見てもわからないと思います。

そして、SBIが2022年予定していて、auカブコムが2020年度中にも無料化すると言っている現物株の取引料の無料化。

これって、なぜできるのか?

米国市場が席巻したフラッシュボーイズが、とうとう日本にもやってきたようです。

取引市場の基本的な仕組み~株の取引手数料無料化を理解する基本【1/3】

取引市場の参加者にはメイカーテイカーがいます。

メイカーは買取の場合は上限価格と数量を提示し、売却の場合は下限価格と数量を提示し、取引が成立したら必ず履行します。

また、メイカーの提示条件は市場に公開され、通常これを板情報と呼びます。

メイカーの主な存在意義の一つは市場の流動性を確保することなので、単純な指値注文とは異なります。

個人投資家は、多くの場合テイカーと考えて良いでしょう。

テイカーはメイカーの提示した情報とマッチングすることによって、取引が成立します。

そして、実際にメイカーテイカーをマッチングさせるのが市場の主催者です。

この時、テイカーは市場の主催者に手数料を払います。

メイカーは市場の主催者からテイカーよりちょっと少ないマーケットメイクの手数料をもらいます。

東京証券取引所だけのように、単一市場の場合の基本的な手数料の流れの例はこんな感じですね。

手数料の額は、説明のための単なる目安です。

例1)

  • ユーザからA証券会社への支払い手数料 120円
  • A証券会社(テイカー)からX証券取引所への支払い手数料 100円
  • X証券取引所から機関投資家(メイカー)への支払い手数料 80円

しかし、取引市場が複数にまたがる場合、特にPTS(私設取引システム)を経由する場合は、話が変わってきます。


PTS(私設取引システム)を含む複数の取引市場を経由する場合~株の取引手数料無料化を理解する基本【2/3】

自分が取引したい株式が複数の市場で売られている場合、SOR(スマート・オーダー・ルーティング)と言う注文方法を使えば、最良の市場を選択して取引してくれます。

この仕組みを利益のために利用する業者がHFT(高頻度取引)業者です。

簡単に言うと、HFT(高頻度取引)業者は先回りしてして買い占めをすることで、ほぼノーリスクで利益を上げます

大量に買い注文を出した場合、SOR(スマート・オーダー・ルーティング)で一番安い市場で買ったとしても、多くの場合単一市場だけで完結しません。

もっと言うと、PTS(私設取引システム)に最安値で取引量が少ない餌を撒いておいても良い

すると、最安値の市場で量の買い注文があることが発覚するし、アルゴリズム上その注文が一瞬板上にさらされる場合もある。

その瞬間、HFT(高頻度取引)業者がすべての市場から安い値で出している対象銘柄を買い占め、釣り上げた値で売る

既に、買い手がいる銘柄を買うのだから絶対に損をしない取引です。

ただ、釣り上げると言ってもボラティリティ、すなわち価格変動の範囲内で釣り上げるので当然限度があります。

ボラティリティの範囲以上に釣り上げようとしても、他の売り手がいるので不可能かつ不経済だからです。

それでも、デイトレなどの超短期で利ザヤを稼ぐトレーダーにとっては充分不利な取引となります。

売りについて説明しましたが、買いについてもほぼ同様のやり方で実現します。

そして、HFT(高頻度取引)業者はPTS(私設取引システム)や証券取引所と同じビル内で構内回線でつないでいたり近くのビルから超高速専用回線をひいていたりと、コンピューターの処理速度も極度に高速化しているなど個人では勝てない仕組みになっています。


HFT(高頻度取引)業者が個人投資家の取引を買う?~株の取引手数料無料化を理解する基本【3/3】

証券取引所はテイカーから手数料を徴収すると書きました。

なので、東京証券取引所で取引をするつもりなら、そこの会員に過ぎない証券会社が手数料を無料化することは理屈の上では不可能です。

一方、HFT(高頻度取引)業者はテイカーに手数料を支払います。

証券取引所と逆ですね。

すると、こんな手数料モデルが出来上がるわけです。

手数料の額は、説明のための単なる目安です。

例2)

  • ユーザからA証券会社への支払い手数料 0円
  • HFT(高頻度取引)業者からA証券会社(テイカー)への支払い手数料 10円

この仕組みにより、HFT(高頻度取引)業者が待ち受けるまでもなく、お金を払って個人投資家のゆるい注文を直接受けて同じことをできるようになります

つまり、手数料無料化の代償として、HFT(高頻度取引)業者が個人投資家の注文を利用して利益を得ることが可能になるわけです。


株の取引手数料無料化の先に、個人投資家は何を目指すべきか?

結局、この状況と言うのは、FXの世界なんかでは普通なわけです。

また、株式市場にしても日本の市場がほぼ東証一極集中と言う特殊な状況が続いたことで、結果的にHFT(高頻度取引)業者が入ってくるのが遅れただけだと言う面があります。

HFT(高頻度取引)業者は物理的、金銭的、政治的に優位性を持っているので、個人では太刀打ちできません。

もし良かったら、以下の本を読んで見てください。

「フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち」マイケル・ルイス著

ちょっと古いですが、日本の状況ががやっと追いついたので、今読むとちょうど良いです。

では、どうすれば良いのか?

短期トレードではなく、長期投資です!

そして、そのノウハウは当ブログで公開しています。

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