米中貿易戦争の結末は予測可能! その経緯と影響は?

行方が気になる米中貿易戦争ですが、日本のメディアは相変わらず誤った情報を流し続けています。

実は、トランプ政権発足時にその基本戦略は見えているし、現時点では選択されたシナリオもほぼ明確なのにもかかわらずです。

トランプ政権は、メディアの言う様な気まぐれな政権ではなく、その発足時から宣言した事を着実にこなしているので、正しい認識をしていれば予想通りの展開に過ぎません。

また、中国側が舵を取る方向も2019年5月の全人代で明確になりました。

したがって、現時点ではすでにその結末や行方の方向性は、予測可能と言えるでしょう。

これから、それを解説していきます。

トランプ政権発足時からあった米中貿易戦争のシナリオ

冒頭の写真ですが、トランプ政権発足時に見た覚えがありませんか?

米大統領補佐官ピーター・ナヴァロの著書「戦争の地政学 米中もし戦わば」です。

ただ、このタイトルは原題からかけ離れていて、誤解を与えやすいんですよね。

原題は「CROUCHING TIGER What China’s Militarism Means for the World」。

直訳するとこうなります。

「うずくまったトラ 中国の軍国主義は世界にとってどのような意味を持つのか?」

このうずくまったトラと言うのは、中国語の「臥虎藏龍」の前半から取られていると思われます。

日本でグリーンディスティニーと言うタイトルで公開された映画のタイトルが「Crouching Tiger, Hidden Dragon」で中国語の原題「臥虎藏龍(がこぞうりゅう)」の直訳ですしね。

中国語の「臥虎藏龍」は、簡単に言うと在野に隠れた天才みたいな意味です。

しかし、ピーター・ナヴァロの著書ではうずくまって虎視眈々と襲い掛かるチャンスを狙っているトラと言う意味で使っているのでしょう。

そもそも、中国の歴史や今までにやってきたこと、それと同様に欧米が中国に対して今までにやってきたことから考えると、中国視点では軍事拡張の末、米国と衝突する以外ないことをはじめの方で論証しています。

論証されるまでもなく、一帯一路、中国製造2025、AIIBなど、その証拠も沢山ありますしね。

その後、双方の軍事力を、その特性や相性を含めて比較した場合、かなりの脅威になり得ることを論証しています。

米国とロシアなどの間では、戦力をお互いに公開・監視しあうことで、戦争の抑止力にしようと言う考え方がありましたが、中国はまったく逆で秘密主義。

戦争抑止と言う考え方はまったくありません。

なので、このパラダイムの違いを利用して欧米に勝つためのガラパゴス的な技術を追求している部分もあるので、実際の戦闘になったらやっかいな部分があるようです。

また、良く言われる経済的相互依存を増やせば、戦争する確率が低くなると言う説に対しても、自国の足かせにはなるが、中国に対する抑制にはなりそうもない事を分析していますね。

では、どうすれば良いのか?

本書の「第六部 力による平和への道」に現在のトランプ外交の基本路線はすべて書かれています。

書かれている内容は、いかに「戦わずに勝つ」かということです。

その中でも中心となる戦略が「第42章 経済力による平和」ですね。

本章の冒頭近くでシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授の言葉が引用されています。

現在、中国を恐ろしい存在にしているのは、膨大な人口を抱える中国が、巨大な香港と化すのではと危惧されるほど豊かな国になりつつあるという事実である。そして、一人当たりのGNPが香港のそれに近くなれば、中国は手強い軍事大国になるだろう。したがって、ずっと魅力的な戦略は、中国の経済成長を減速させる方策を積極的に打ち出すことである。経済が成長しなければ、中国は富を軍事力に変換することもできないし、アジアにおける潜在的覇権国になることもできない。

この引用の後、本書ではこんな見出しが続きます。

私たちは中国製品を買うたびに、中国の軍事力増強に手を貸している

もっともな話ですが、ことはそう簡単ではありません。

さらにこう続きます。

こう言うと単純明快な方策のように思われるが、言うは易く行うは難し、である。その実行には、さまざまな経済的・政治的・イデオロギー上の障害が伴う。

具体的には、中国製品への依存度を削減することによるインフレ率の上昇、貧困層への経済的打撃、自由貿易主義者との対立などです。

トランプ政権は、これらを緩和するために今まで努力してきたわけです。

雇用率を上げ、景気を改善し、アメリカファーストの流れを作った。

そして「第42章 経済力による平和」の最後に見出しにはこんなことが書かれています。

「経済を健全化しなければ、アメリカは中国に対抗できない」

つまり、トランプ政権は、本書に書かれているシナリオを忠実になぞっているわけです。

ですが、トランプ政権発足当初は中国問題にはスポットライトがあたりませんでした。

それには、理由があるのです。


米中貿易戦争の開始が遅れた理由

トランプ政権発足時、緊急に片付けるべき問題は2つありました。

IS(イスラム国)と北朝鮮問題です。

まずは、米国にとって最優先課題であるIS(イスラム国)を片付け、北朝鮮にくさびを打ち込みました。

それと並行して米中貿易戦争を実行に移すために、米国の経済を立て直しましたよね。

これにより、米中貿易戦争を開始できる条件が整ったのです。

また、これだけのことをクリアする時間が必要だったので、中国問題への着手は遅れました。

ただ、その間、中国はトランプ政権を甘く見ていたので結果的には助かりました。

中国がトランプ政権を見誤った理由は、中国とつながりが深かった反トランプ陣営のトランプ政権のこき下ろしを信じてしまったことだと言われています。

多くの局面でトランプ政権の出方を見誤っているのも納得ですね。

メディアにも反トランプ勢力の影響が強いので、トランプ政権の出方を的確に予測できていませんが、トランプ政権はその発足時から予想外の動きなどまったくしていません。

むしろ、予想通りと言うか、最初から宣言している通りの方向に進んでいます。


中国経済を襲うミンスキー・モーメントとは?

一方で、中国も自由主義経済に爆弾を抱えています。

数年前からささやかれているミンスキー・モーメント。

カッコいいので使ってみましたが、ミンスキー・モーメントとは「形成されたバブルが崩壊に転じる瞬間」を指します。

著名な経済学者であるハイマン・ミンスキーにちなんだ用語です。

中国のGDPは中国共産党により人為的に成長させられていました。

統計情報のウソはありますが、それはここでは論じません。

具体的には、必要以上に大量の設備投資を実施した結果です。

中国共産党が設備投資をすればそれらがGDPに上乗せされるので、定義上GDPは増えざるを得ません。

日本の政治家より、よっぽど経済がわかっているのがちょっと悔しいですね。

ただ、これを何度も繰り返すと、受注する方も儲かるから、お金を借りてでも設備投資をして大量に受注します。

バブル経済になるわけですね。

で、バブルがはじける瞬間がミンスキーモーメント。

では、その時どうなるのか…

対策は3種類にわかれます。

  1. 政府所有として全面救済する(統制経済的政策)
  2. 潰れるところは潰れるまま放置(グローバル経済の観点)
  3. 経済にとって重要な企業は救済する(修正資本主義的政策)

現在の中国は、ほぼ確実に2は避けるでしょう。

元々、経済を良くすると言う理由で強権をふるっていた政府が、この状況を容認したら転覆しかねない。

一般的な、自由主義経済権は2か3ですが、中国は1を選択可能です。

統制経済化すればなんなく達成できます。

しかも、それらの企業は中国人民のものではなく、中国共産党の所有物なので何の問題もありません。

その方向に行くであろう状況証拠は2019年5月の全人代で明らかになりました。

自由主義経済を導入した鄧小平以来否定されていた毛沢東路線が、この全人代で再び評価されるようになりました。

つまり、統制経済への移行の道筋をつけ始めたということです。

現時点では可能性への布石に過ぎませんが、有力な布石であることには違いありません。

中国にはすでに実質上米ドル資産はゼロ(借金を差し引いた場合)と言われています。

この結末にいたる可能性が100%とは言いません。

しかし、少なくとも中国が統制経済に移行する可能性を念頭に入れて行動することが、今後は必要になるでしょう。


米国、中国、世界経済への影響と予想される結末

このシナリオに進んだ場合、米国経済は一時的に打撃を受けますが回復して行くと考えています。

また、中国の経済は統制経済化することにより救われます。

ただし、それは中国共産党の資産として救われると言う意味で、外国人が中国に投資したお金は返って来ない可能性が高いです。

人民の個人資産も没収でしょうね。

ヨーロッパは中国とズブズブで、その上EUにより通貨発行権や国の財政の決定権が奪われているのでインパクトが大きいでしょう。

日本は、米中貿易戦争をそもそも理解していない経営者が多いので、そういう人たちは大きな損失を受けるはずです。

いずれにしても、ドルコスト平均法による長期積立投資をするなら米国市場一択ですね。

投資は自己責任。

リスク管理を徹底して楽しみましょう。