アメリカのシリア撤退で米中対立と日本の原油事情に危険が迫る? ~たぬき先生とうさぴょんの楽々国際政治~

「アメリカのシリア撤退で米中対立の激化と日本の原油供給に危機が迫る可能性がでてきたね」

たぬき先生の意外な言葉にうさぴょんはその理由を訊いてゆく。

アメリカのシリア撤退で何が起きるのか?

うさぴょん
うさぴょん
今日は、アメリカのシリア撤退で投資環境がどう変わるかを教えて欲しいぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
結論から言うと、対中制裁の本格化とホルムズ海峡の閉鎖による原油調達リスクの増加が見込まれるね。
ただ、そのリスクは急激に上がるわけではないし、必ずそうなるわけでもない。
確率が上がると言う話だ。
うさぴょん
うさぴょん
どういうことぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
シリアからの米軍撤退は、もともと公約に掲げられていたと言うだけではなく、トランプ政権の今までの動き方を見ていると別の意図も考えられるんだ。
トランプ政権は今まで、マーケティングのお手本のような選択と集中を繰り返してきた。
IS壊滅→北朝鮮への武力牽制→対中貿易戦争と言うように、必ずリソースを集中して事にあたってきた。
まさにビジネスマンの考え方だね。
ならば、今シリアから武力を引き上げたと言うことは、今までのトランプ政権のやり方から考えると、対中向けの武力を集めていると考えるのが自然だよね。
うさぴょん
うさぴょん
でも、シリアから米軍が引き揚げたら混乱が起こるかもしれないし…
たぬき先生
たぬき先生
そこは、アサド政権と親密なロシアにまかせれば良いし、現時点でそういう流れになっているよね。
ロシアにまかせると言う時点で妥協はしているので、ベストの解にはならないんだけど、そもそも国際政治でベストの解なんて得られることはない。
逆にロシアがそちらに力を注いでいれば、ロシアも米中対立にに口出しをする余裕はなくなる。
むしろロシアに妥協して恩を売っているので、対中戦略ではロシアの譲歩を引き出しやすくなる。



軍事利用=軍事紛争や戦争ではない

うさぴょん
うさぴょん
米中の軍事衝突がとうとう始まるのかぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
2つの理由で軍事衝突はそう簡単には起こらない。
一つ目の理由は、今回の軍事引き上げは有事のための準備にしか過ぎないということ。
二つ目の理由は、少なくともトランプ政権は軍事衝突は回避したいと考えているということ。
そもそも、軍事利用の多くは威嚇によるけん制効果であって、軍事の行使が目的ではない。
いざと言う時に軍事行使ができないと威嚇にならないので、威嚇が利かなかった場合は軍事行使をしなければならなくなる。
威嚇が失敗したのに軍事行使をしなければ、次からは威嚇が利かなくなるからね。
そういう意味で、軍事的な威嚇は入念な計画を立ててから実施するのが普通だよ。
うさぴょん
うさぴょん
ところで、有事ってどんな場合のことだぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
一つ目は、香港情勢。
香港のデモで中国共産党が、明らかに軍事的に不穏な動きを見せたらなんらかの対応をせざるを得ない。
二つ目は、台湾情勢。
来年1月に台湾総統の選挙があるんだけど、これって現職の台湾独立派と中国への吸収派の一騎打ちと言っても良い選挙なんだ。
台湾には高い山があるので、中国のものになったら東シナ海、南シナ海、フィリピン海を一望に臨める。
ミサイルを配備すれば、中国の制海戦略は大躍進するし、日本は今までのようなルートを使って中東との原油貿易ができなくなる。
今のところ、ぱっと思いつくのはこんなところかな。



妥協=和解ではない

うさぴょん
うさぴょん
でも、アメリカと中国って、貿易戦争で部分的妥協をしたばかりだぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
敵対していてもお互いに妥協はするし、親しくても国益を守るために部分的には敵対する。
これが、国際政治。
国家間の問題が皆無になることは未来永劫あり得ないことは、今までの歴史からわかって欲しいな。
冷戦時代のアメリカとソ連もホットラインで話しながらお互いに様々な妥協をし合っていた。
妥協=和解じゃないんだ。



日本が有志連合に参加しなかったツケがまわってくる可能性も

うさぴょん
うさぴょん
ところで、原油調達リスクが増加するってどういうことぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
シリアから軍隊を引き揚げると言うことは、他のところからも軍隊を引き揚げる可能性が増えたということだ。
つまり、シリアと同じように、アメリカがホルムズ海峡の防衛から撤退する可能性が増えてきたってこと。
米国は原油産出国だからホルムズ海峡の防衛にメリットなどない。
有志連合を募ったけれど、反応したのはイギリスとオーストラリアだけ。
日本は有志連合に参加しないで、独自に自衛隊を派遣する方針を打ち出したので、「それなら、日本が自国だけで守れば良い」と言うのは自然の成り行き。
因みに、日本が有志連合に参加していればアメリカはホルムズ海峡からの撤退を選択しにくい。
自分で言いだした上に、もっとも米国を支持する同盟国の日本が賛同したわけだから。
でも、日本はそれをやらなかったわけだ。
つまり、米国が提案した有志連合への参加より、イランとの友好関係が大切だと言うメッセージをアメリカに発信した。
そりゃ、アメリカに日本に協力する義理はなくなるよね。
そんなわけで、アメリカは、シリアと同じようにホルムズ海峡の防衛からも撤退して軍事力を対中向けに集結する可能性が高くなったわけ。
うさぴょん
うさぴょん
そうなったら日本はどうなるのかぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
中東から原油を輸入するためのシーレーンが封鎖されて、日本では原油が高騰する可能性がある。
場合によっては、日本が米国から原油を買う事までトランプ政権は考えているのかもしれない。
まあ、備蓄もあるし急激にどうこうってことは無いと思うけど、一番怖いのはパニック。
パニックに乗らないことが大切だね。
それに、その可能性はそれほど高いわけじゃない。
「そうなる可能性がある」とわかっていれば準備もできるし、いざとなっても慌てない。
今のところは、そんな感じでふんわりと受け止めておけば良いと思うよ。

投資は自己責任。

リスク管理を徹底して楽しみましょう。