MMT理論を簡単にわかりやすく【6】マクロ経済がざっくりわかるたった一つの恒等式 ~たぬき先生とうさぴょんの楽々経済教室~

国内民間収支+国内政府収支+海外収支=0

この式が言っていることはただ一つ。

誰かの黒字は他の誰かの赤字だということ。

それだけです。

それでは、たぬき先生の講義を覗いてみましょう。

誰かの黒字は誰かの赤字~MMT(現代貨幣理論)に限らない普遍的な真理

うさぴょん
うさぴょん
誰かの黒字は誰かの赤字ってどういうことだぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
例えば、企業がモノを売れるのは、それを買う人がいるからだよね?
従業員が貰う給料は、企業が払っているよね?
お金を貰う人がいれば、必ずその分払う人がいるってことだね。
うさぴょん
うさぴょん
確かにそうだぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
それを数式にするとこうなるんんだ。
国内民間収支+国内政府収支+海外収支=0
うさぴょん
うさぴょん
式にするとわからないぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
それじゃあ、この式をわかりやすく解説しよう。



国内民間収支と国内政府収支の関係でMMT(現代貨幣理論)が見えて来る

たぬき先生
たぬき先生
この式を簡単にするために、まずは海外収支をゼロだと仮定しよう。
すると、数式はこうなるよね?
国内民間収支+国内政府収支=0
うさぴょん
うさぴょん
確かに、そうだけど、だから何なんだぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
この式を見るとある重要な事実がわかるんだ。
ここで一つ質問しよう。
国内政府収支が黒字、つまりプラスだったら、国内民間収支はどうなると思う?
うさぴょん
うさぴょん
足してゼロになるんだから、国内民間収支はマイナスだぴょん。
つまり、赤字ってことだぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
正解!
国内政府収支が黒字なら、国内民間収支は赤字になる。
つまり、政府の黒字は民間の赤字ってことだ。
うさぴょん
うさぴょん
えっ!
じゃあ、民間が常に黒字だったら政府は必ず赤字になるってことなのかぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
その通りだよ。
だから、政府の赤字が増えることは一概に悪いことではないんだ。
しかも、MMT(現代貨幣理論)では、国には財政的な予算制約はないと言うことは、「MMT理論を簡単にわかりやすく【1】政府はお金をいくらでも使えるの?」で説明したよね。
もちろん、そこで説明したように国の供給能力を基準とする予算制約はあるけどね。
むしろ、政府の黒字が増える方が危険な場合があるんだ。
うさぴょん
うさぴょん
えっ、それってどう言うことぴょん?



政府の黒字は、バブル経済のサインかも知れない?

たぬき先生
たぬき先生
政府が黒字ってことは、民間は赤字ってことだよね?
それ自体は悪くない。
景気が良くなって民間の投資や消費が促進されたってことだから。
企業が需要の増加に基づき、設備投資をするために必要な借入金をしたり、経済の先行きに安心感を持った消費者が適切なローンを組んで家や車を買うのがこれにあたる。
しかし…
怖いのは、経済成長に見合わない程、大量の借金が増える場合なんだよね。
お金を借りてリスクの高い金儲けに走るとか、本来返済能力の無い人までが借金して家や車を買うとか。
すると、それらの貸付は将来的に不良債権になる可能性が高くなる。
うさぴょん
うさぴょん
それは、怖いんだぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
これが、バブルのサインになるんだよね。
常にそうとは限らないけど、政府の黒字が続く場合、バブルの心配をした方が良いかもしれない。
うさぴょん
うさぴょん
わかったぴょん。
ところで、そろそろ海外収支っていうのを教えてぴょん。



海外収支でわかる財政均衡、グローバリズムの末路

たぬき先生
たぬき先生
今度は、海外収支を式に入れる代わりに、政府収支をゼロ、つまりプライマリーバランスが取れていると仮定しよう。
すると、数式はこんな風になる。
国内民間収支+海外収支=0
因みに、海外収支って言うのは、海外の国から見た自国に対する収支。
日本を例に挙げると、日本が貿易黒字だと、海外の国は当然赤字になるよね?
だから、海外収支はマイナスになる。
さて、これを見てどう考えるかな?
うさぴょん
うさぴょん
つまり、国内民間収支が黒字になるためには、海外収支がマイナスにならなきゃいけないってことなのかぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
その通り。
政府が収支ゼロのプライマリーバランス政策を守りながら国民が豊かになるためには、その分を貿易黒字で補う必要があるんだ。
だけど、これって大きな問題を抱えているってことがわかるかな?
うさぴょん
うさぴょん
良いものを作って、売って、貿易黒字にすれば良いんだぴょん。
何の問題も無いんだぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
じゃあ、こう言い換えよう。
貿易黒字を別の言い方をすると海外収支、つまり海外の国から見た自国に対する収支がマイナスなんだよ。
どこかの国が貿易黒字になるためには、どこかの国が貿易赤字である必要がある。
こんな風に、自国に有利だけど他国に不利な経済政策を近隣窮乏政策って言うんだ。
うさぴょん
うさぴょん
きんりんきゅうぼうせいさく?
たぬき先生
たぬき先生
そう。
自分の国を豊かにするために、ご近所さんにあたる他国を貧しくする政策ってことだね。
うさぴょん
うさぴょん
でも、そんなことって実際に起きてるのかぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
一番分かりやすいのがEUだね。
EUではイギリスを除いて、自国通貨の発行権も無く、自国の金融政策も制限されている。
平たくいうと、全ての加盟国はプライマリーバランスを守るような制限がかけられているんだ。
だから、「国を豊かにするには貿易黒字だ!」と言うことで、ドイツが他のEU諸国にモノを売りまくった。
うさぴょん
うさぴょん
問題なさそうだぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
問題はここからだ。
他のEU諸国は貿易赤字が続いてどんどん貧乏になって行ったんだよ。
そうするとね、貧乏なEU諸国はドイツから輸入するお金も無くなった。
かくして、ドイツと他のEU諸国の貿易不均衡はほぼ解消されたんだ。
うさぴょん
うさぴょん
結局、問題無いのかぴょん?
たぬき先生
たぬき先生
いやいや。
貿易黒字が無いとドイツは経済成長できないから、次のターゲットを探したんだ。
それが中国。
中国にモノをたくさん買ってもらうことで、さらなる経済成長を続けた。
うさぴょん
うさぴょん
やっぱり問題がなくなったんだぴょん。
たぬき先生
たぬき先生
最終的には、2つの結果がでた。
一つ目は、移民の問題。
周りの国が貧しくなったので、周りの国からドイツに移民がどっと押し寄せたんだ。
移民の人たちは、給与水準が低い国から来たので、低賃金でバリバリ働く。
すると、元々のドイツ人の仕事が減り、給料も減るわけだ。
こうして、貿易黒字なのに貧しい生活などと言う矛盾した状態に陥ってしまったんだよね。
二つ目は、中国の凋落。
米中貿易戦争で中国が痛めつけられて、ドイツから輸入している場合じゃなくなってきたよね。
すると、ドイツは生きる道を失い、代表的な銀行までリストラする始末。
つまり、プライマリーバランスを維持することで、小さな政府を実現し、弱肉強食のグローバル経済で稼いでいくと言う目論見の結末は、破たんしか無いってことだね。

投資は自己責任。

リスク管理を徹底して楽しみましょう。